体外受精
体外受精(In Vitro Fertilization:IVF)とは、妻の体内から取り出した卵子と精子を同じ培養液に入れて受精させ、順調に発育した胚(通常2-5日間培養後)を子宮内に移植(胚移植)することにより妊娠を目指す不妊治療です。
顕微鏡を使いながら精子を卵子へ直接注入する顕微授精(Intracytoplasmic sperm injection:ICSI)とは異なり、精子自らの力で受精させるため顕微授精より安価です。
体外受精(IVF)の適応
原則として体外受精(IVF)は、これ以外の医療行為では妊娠成立ができない場合に行われます。
具体的には、以下のような場合があげられます。
一般的な不妊治療で妊娠できなかった場合
タイミング法や人工授精を繰り返し行っても、妊娠に至らなかった場合。
卵管性不妊
両側の卵管を切除した方や、検査で両側の卵管の閉塞や癒着が確認されているなど、卵管で精子と卵子が出会う過程が難しいと判断された方。
免疫性不妊
女性が抗精子抗体と呼ばれる抗体を持っていると、精子の運動や受精が妨げられてタイミング法や人工授精では妊娠が難しい場合があります。
男性不妊症
精子の数が少なかったり運動率が低い場合に、タイミング法や人工授精での妊娠は難しいと判断されることがあります。
その他
上記に限らず、患者さんのご年齢や基礎疾患(持病)などによっては、早めの段階で体外受精の選択肢をご提案することもあります。
体外受精の妊娠率
日本産科婦人科学会の報告によると、2022年に日本では体外受精を用いた治療が91,402周期分行われています。そのうち、移植1回あたりの妊娠率は約25%、移植1回あたりの生産率は約18%です。
体外受精のリスク・副作用
受精障害のリスク
不妊症の原因が卵子、精子のどちらかもしくは両方の受精障害であった場合、受精率が低くなります(1個も受精卵が得られない場合もあります)。また、異常受精(主に多精子受精によるもの)が起こる可能性もあります。これらは受精を試みたのちに明らかになり、事前に予測することは困難です。
卵巣刺激によるリスク
1回の採卵あたりで効率よく妊娠に適した卵子を採取するため、排卵誘発剤を使用します。卵巣にあまりに多数の卵胞が育ってきた場合、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)という状態になります。もともとの卵巣の状態によってはOHSSを起こしやすい方もいらっしゃいますが、およそ5–10%の方に発生します。
OHSSでは、卵巣からのホルモンなどの産生が高くなりすぎるために、お腹や胸に水が溜まったり血液が濃縮したりし、早期に適切な治療をしなければ重症化することもあります。
異所性妊娠(子宮外妊娠)
自然妊娠と比べ、体外受精では異所性妊娠の発生する確率がやや高くなり(1〜3%)、入院や手術が必要となることもあります。
体外受精の費用
保険適用
2022年4月から体外受精は健康保険の対象となりました。窓口での負担額は治療費の3割負担なります。 また、保険診療における体外受精は、令和3年度までの助成金と同様に年齢・回数に制限がございます。
年齢制限
治療開始時において女性の年齢が43歳未満
回数制限
初めての治療開始時点の女性の年齢 | 回数の上限 |
40歳未満 | 通算6回まで(1子ごとに) |
40歳以上43歳未満 | 通算3回まで(1子ごとに) |
保険適用前から不妊治療をされている場合、上記の回数上限に過去の治療実績は含まれません。
予約方法
生殖補助医療(ART)をご希望の方は、治療方針をご確認いただき、ご予約の上、ご来院ください。
当院はセカンドオピニオン目的のご予約は承っておりません。
※他院より転院をお考えの患者様は、保険診療で体外受精を行うために、前医での保険使用状況の情報(初回治療計画作成日・保険での移植回数・余剰凍結胚の有無)が必要となります。治療をお受けになられた医療機関の紹介状をご用意いただきご受診ください。