不育症

不育症とは

「妊娠はするが2回以上の流産・死産もしくは生後1週間以内に死亡する早期新生児死亡によって児が得られない場合」を不育症と言います。
不育症のリスク因子として、凝固異常・子宮形態異常・内分泌異常・夫婦染色体異常が挙げられます。ただし不育症の方全員にこれらの検査を行っても、リスク因子が検出されるのは全体の35%程度で65%の方はリスク因子不明となります。
リスク因子不明の場合、その大半は偶発的流産を繰り返しているものと考えられています。

不育症の原因

不育症の主なリスク因子は以下の4つです。

血栓性素因(凝固異常)

体質的に血液が固まりやすい(血栓性素因)と、胎盤内にできた血栓が血管を塞ぎ(胎盤梗塞)、胎盤機能不全となります。
代表的な凝固異常の疾患として抗リン脂質抗体症候群が良く知られています。抗リン脂質抗体によって自己免疫の異常が起き、後天的に血栓がつくられやすくなります。
また、抗リン脂質抗体症候群の他にもいくつかの因子(プロテインS欠乏症、プロテインC欠乏症、第Ⅻ因子欠乏症)が反復流産や死産のリスク因子といわれています。

子宮形態異常

子宮の形態異常には、先天的な子宮の奇形と後天的な異常があります。後天的な異常の代表として、子宮粘膜下筋腫(子宮の内側にできる子宮筋腫)があります。子宮形態異常は不育症や不妊症との関連性が高く、特に中隔子宮と双角子宮は注意すべき不育症のリスク因子として考えられています。子宮の形態異常があれば即手術、というわけではなく、個別に慎重に手術適応を判断していきます。

内分泌異常

甲状腺機能が亢進している場合や逆に低下している場合、また糖尿病の場合には流産の可能性が高くなります。血液検査で甲状腺ホルモンや血糖の検査を行い、異常がある場合は治療を行います。

染色体異常

妊娠初期の流産の原因の大部分(約80%)は胎児(受精卵)に偶発的に発生した染色体異常です。流産を繰り返す場合は、夫婦どちらかに均衡型転座などの染色体構造異常がある可能性が高くなります。

不育症の検査

流産、死産または早期の新生児の死亡を繰り返し経験した場合には、不育症を疑い、そのリスク因子に関する検査を行うことが推奨されます。不育症一次検査の主な内容はこちらです。

抗リン脂質抗体

4つの抗リン脂質抗体のいずれか一つ以上が陽性であった場合には、12週間以上の間隔をあけて再検査します。再度陽性となった場合に正式に「陽性」と判断します。

  • ループス アンチコアグラント
  • 抗カルジオリピン(CL)IgG 抗体
  • 抗カルジオリピン(CL)IgM 抗体
  • 抗カルジオリピンβ2 グリコプロテイン I(CLβ2GPI)複合体抗体

子宮形態検査

スクリーニングとして経腟超音波検査と子宮の中に造影剤を入れて子宮の内腔の形を見る子宮卵管造影検査(HSG)、内視鏡を使って子宮の内部を直接観察する子宮鏡、腹部に小さな穴をあけてそこから腹腔鏡を入れて腹部内腔を観察する腹腔鏡検査が行われます。そしてこれらの所見や結果を組み合わせて診断します。また、骨盤MRI検査や3次元経腟超音波検査は中隔子宮と双角子宮の鑑別には有用とされています。中隔子宮と双角子宮は不育症を発症する頻度が高いとされています。

内分泌検査

血液検査により甲状腺ホルモンの測定および血糖値の測定を行います。

夫婦染色体検査

反復流産や習慣性流産の場合、夫婦の染色体の構造的な異常が原因の場合があります。習慣性流産の場合、2~6%は夫婦のどちらか一方に染色体の均衡型転座を認めます。夫婦の染色体検査により、夫婦の染色体異常の有無がわかります。

不育症の治療

抗リン脂質抗体症候群

抗リン脂質抗体症候群では、特に妊娠中は血栓症のリスクが高まります。低用量アスピリンとヘパリン(5,000~10,000 単位/日)の併用療法により血液が固まりにくくします。

子宮の形態異常

一般的には治療を行う必要はありませんが、不育症の場合は子宮内を正常にする必要があります。
特に流産率が高いと言われている中隔子宮の処置は大切です。子宮鏡下で中隔を切除する方法(子宮鏡下中隔切除術)により、出産率が改善します。

内分泌異常

甲状腺機能亢進症や低下症では、適切な治療を受け、機能の回復を待ってから妊娠することが大切です。妊娠中も治療を続けるなど十分なケアが必要です。
糖尿病についても同様に、適切な治療を行ってから妊娠することが大切です。妊娠中も治療を続ける必要があります。

夫婦染色体異常

染色体異常が発見された場合は、転座保因者に対する根本的な治療法はありません。治療法の一つとして胚の着床前診断が挙げられます。これは体外受精を応用して胚(受精卵)の染色体検査を行い、染色体正常胚を子宮内に移植し流産を予防するという方法です。しかし、現在のところ、無治療のまま自然妊娠を繰り返す場合と着床前診断を行って妊娠する場合とでは、最終的に生児を得る割合(累積妊娠率)に差はないという結果が示されています。

Tender Loving Care

“Tender Loving Care”とは、心地良く包み込むような、「守られている」と感じられるようなケアです。不育症患者に対し、こうした精神的なサポートを積極的に行うと流産率が低下することが科学的に証明されています。
妊娠初期には是非ともご主人様も一緒に超音波を見にいらっしゃってください。ご夫婦が共に新たに宿った生命の誕生を待ち望んでいるのだ、という雰囲気が胎児の健やかな成長に不可欠です。
当院では「『楽しく』『笑顔で』『前向きに』治療を受けていただく」ということが不育症の治療にもつながると考え、「tender loving care」を心がけてまいります。

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