内服の排卵誘発剤について
当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせて、適切なお薬を選択し、妊娠に向けたサポートを行っています。内服の排卵誘発剤は主に「レトロゾール(フェマーラ®)」と「クロミフェン(クロミッド®)」が用いられます。ともに特徴のあるお薬なので、どちらが自分の状態に合っているか?を考察しながら使い分けるのがおススメです。
「レトロゾール(フェマーラ®)」は、従来適応外使用(自費)だったのですが、2022年4月から保険適応になりました。
レトロゾール(フェマーラ®)の特徴
メリット
- 妊娠・出産の可能性が高い薬
特に PCOS の方で効果が高いというデータがあります。
- 子宮内膜が薄くなりにくい
受精卵が着床しやすい状態を保ちやすく、精子の通り道も悪くなりません。
- 赤ちゃんへの安全性も確認済み
大規模研究で、奇形のリスクは自然妊娠と変わらないとされています。
- 最新のガイドラインで“第一選択”の薬
世界的にも PCOS の排卵誘発ではレトロゾールが最初にすすめられています。
- 体から薬が早く抜ける
排卵誘発で飲む期間の後、着床の頃にはほぼ体に残っていません。
作用の仕方
- 女性ホルモンを一時的に少し下げることで、脳に「卵胞が育っていない」と錯覚させ、卵胞を育てるホルモン(FSH)が大量に分泌され続けることで、排卵を促します。
クロミフェン(クロミッド®)の簡単な特徴
メリット
- 複数の卵が育ちやすい薬
人工授精で“チャンスを増やしたい”ときに使われることがあります。
デメリット
- 子宮内膜が薄くなったり、精子の通り道が悪くなることがある
そのため、レトロゾールより妊娠率が下がることがあります。
- 多胎妊娠(双子・三つ子)が増えやすい
作用の仕方
- 卵胞が育って女性ホルモンが分泌されても、脳がそれを感知できず「女性ホルモンが低い」と錯覚させることにより、卵胞を育てるホルモン(FSH)が大量に分泌され続けることで、排卵を誘発します 。
排卵誘発剤の選択
| 目的 | 推奨される薬剤 | 理由 |
| 排卵しにくい方、排卵が遅い方の排卵を促す場合 | レトロゾールが有利 | 副作用が少なく、出産率のデータも優位 。内膜などへの影響もない 。 |
| 1個の卵胞を複数発育させたい場合 (過排卵誘発を目指す場合) | クロミフェンが有利 | 多排卵になりやすい性質を利用し、チャンスを増やす 。 |
| 原因不明不妊に対する人工授精(AIH) | レトロゾールまたはクロミフェン | 統計学的に優位な成績差はなく、どちらも推奨とされています 。ただし、上記に示した薬剤の特徴より、レトロゾールから試すという選択をする場合もあります。 |
注射(ゴナドトロピン)について
- 妊娠率が高い場合がある一方、
多胎妊娠のリスクが大きく上がるため、第一選択には推奨されていません。
