採卵とは
採卵とは排卵の直前に卵巣に穿刺して卵子を体外に取り出すことを指します。
通常、1カ月に1回1つの卵子が大きく成長しますが、体外受精や顕微授精に際し、薬剤で卵巣を刺激して卵子を複数個成長させ、採卵します。
経腟的採卵
排卵誘発剤によって大きくなった状態の左右の卵巣は、腟の奥(腟円蓋)に接しています。
そのため、普段の婦人科診察のように経腟超音波(エコー)でモニターを確認しながら、腟から採卵用の細い針を押し当てることで、卵巣の中の卵胞を穿刺し、卵胞液(卵胞の中の液体)を吸引して卵子を回収することができます。
経腹的採卵
卵巣や子宮筋腫などの腫瘍、子宮内膜症や子宮腺筋症などの癒着によって、経腟的な穿刺が困難な場合、慎重に検討の上、経腹的に採卵を施行することがあります。
採卵時の麻酔
当院では発育した卵胞の個数と希望に合わせては、鎮痛剤のみ、局所麻酔、もしくは静脈麻酔下で採卵術を行います。
鎮痛剤
痛み止めの座薬を使用し痛みを軽減します。腟壁はお産のときに備えてもともと痛みを感じにくい臓器です。個数が3-4個であれば鎮痛剤で十分なケースがほとんどです。点滴をとる必要がなく、術後はスムーズにご帰宅可能です。
局所麻酔
鎮痛剤に加えて腟壁に局所麻酔薬を注射することで、穿刺時の痛みを緩和可能です。意識がはっきりしておりますが腟壁の痛みはほとんどありません。術後はスムーズに帰宅が可能です。
静脈麻酔
卵胞が多数ある場合やご希望の際は、静脈麻酔を行います。点滴でうとうと眠っているような状態で採卵します。採卵時の記憶はなく、目覚めたときには採卵が終わっています。
採卵の注意点
アレルギー・ショック
採卵時には、麻酔(静脈あるいは局所)を行う場合があり、まれに呼吸抑制や血圧低下がみられることがあります。
卵巣出血・感染・他臓器損傷
卵巣の穿刺は超音波ガイド下で慎重に行っていますが、子宮や膀胱を穿刺しないと採卵ができない場合もあります。一時的な痛みや出血がおこりますので、安静や処置が必要となることがあります。
穿刺による卵巣表面からの出血は通常自然に止血しますが、出血が多いときは輸血が必要となったり、そのほかの合併症として、腟壁からの出血、膀胱・尿管・腸管の損傷、感染(膿瘍形成)などがあります。これらの治療のために手術を行わなければならないこともあります。(こうした合併症の発生率は、1%以下と言われています。)