性機能障害とは
何らかの理由により満足な性交渉を持つことができない状態のことを指します。
最もよく知られているのは男性のED(勃起障害、過去にはインポテンスという言葉が使われていたことがあります)ですが、他にも様々な状態が性交渉の妨げになることが知られています。また、その原因は男性のみならず女性にあることもあります。
男性性機能障害の原因
勃起障害
いわゆるEDのことです。特に不妊治療の現場では、俗に「タイミングED」と呼ばれる、不妊治療でタイミング療法を開始したところED状になるケースが多く見られます(一説によると、タイミング療法を開始すると、その頻度は40-50%とする報告もあります)。「タイミングED」は多くは「心因性ED」と考えられますが、思いがけず糖尿病・高血圧・ホルモン異常などの発見につながることもあり、当院では総合的な検査をお勧めしております。
射精障害
腟内射精障害
マスターベーションでは射精可能ですが、女性の腟内で射精することが困難な状態です。日常のマスターベーションの実施法が個性的な方に多いと報告されています。
逆行性射精
射精に際し、精液が尿道口から排出されるのではなく、膀胱の方に排出される状態です。典型的にはオーガズムを感じるのに、精液が排出されません。
その他
早漏、射精遅延(いわゆる遅漏)や、無射精などの状態があります。
男性性機能障害の治療
勃起障害
通常は薬物療法によって改善を目指します。一般的には、内服薬であるPDE5選択的阻害薬が用いられます。当院では日本で承認されている薬剤のうち、シルデナフィル錠(バイアグラ)、シアリス錠を症状に応じて処方しております。
シルデナフィル錠50㎎ (バイアグラのジェネリック) |
シアリス錠20㎎ | |
1錠あたりの価格(税込) | 1,000円 | 2,000円 |
作用時間 | 5~6時間 | 24~36時間 |
服用のタイミング | 性行為1時間前 空腹時は30分程度で作用する場合もある |
性行為3時間前 空腹時は40分程度で作用する場合もある |
食事・アルコールの影響 | 影響を受けやすい 食後1時間以内に使用した場合、効果が減弱する場合あります。空腹時の使用がお勧めです。 |
影響を受けにくい ただし、多量の飲酒は大脳の性中枢を抑制するため、勃起自体が困難になります。 |
特徴 | 勃起の後押しが強く、硬い勃起が得られる | 効き方がマイルドで自然な勃起が得られ違和感が少ない |
副作用(一般的には軽微な症状なことが多いです。また必ず副作用がでるわけでもありません) | 顔のほてり、頭痛、動悸、鼻づまり、目の充血、視覚異常など | 顔のほてり、頭痛、動悸、鼻づまり、目の充血などバイアグラと比較して軽い場合が多いです。 |
注意事項 | 服用時は車の運転などは控えましょう | まれに背部(腰、おしり、太ももの裏、ふくらはぎなど)に強い筋肉痛がでる場合があります。 |
射精障害
膣内射精障害
腟内射精障害を治す特効薬はありません。近年、膣内の環境を模したマスターベーターを用いたリハビリが治療として有効であると報告されています。マスターベーションを行う際には、強い刺激のものから弱い刺激のものへ移行させていくリハビリテーションを繰り返し、膣内での射精を目指していきます。
逆行性射精
内服治療により内尿道括約筋を閉鎖することができれば、順行性に射精することができます。また、稀ではありますが、膀胱内の精子を回収し利用する方法もあります。
無射精症
閉塞の原因を特定し、閉塞を解除することができれば、射精が可能となります。
女性性機能障害の原因
性的関心・興奮障害
性欲が低下し、性的刺激に興奮状態が得られにくい(濡れにくい)状態です。
オーガズム障害
十分な興奮に引き続いて起こるべきオーガズムが遅れるか、起こらない状態が繰り返されることをいいます。
性器-骨盤痛・挿入障害
十分な性的興奮があり、濡れているのに、挿入に際し何らかの痛みを感じる状態です。痛みの部位により性器痛(挿入時痛)と深部痛(骨盤痛)に分類して考えていきます。
女性性機能障害の治療
性教育
性機能についての教育と性行為の様々な方法(前戯や性交の体位など)を試みることを勧めることで、劇的に改善することが期待できます。
女性の性機能に影響を与える病気の治療
排尿障害、婦人科的がん、脊髄損傷などの神経障害、糖尿病などの代謝性疾患、多嚢胞性卵巣症候群、甲状腺ホルモン異常、また鬱や不安などの精神障害などの病気は、女性の性交を困難にしています。これらの病気に対する治療は、女性が性交を楽しむ能力を改善するのに役立ちます。
また、鬱の女性に対しては、性機能に影響がより少ない薬へ変更することも検討する必要があります。
精神療法やカウンセリング
精神的あるいは情緒的ストレスが性機能障害の最初の原因になっているケースでは、性交治療やカウンセリングがとても大切です。セクシャリティや性反応への誤解、パートナーとの対話の改善、女性が性交を十分楽しむことを妨げる潜在的な精神的問題を見つけることに焦点を当てます。
薬物治療
テストステロン、エストロゲン補充、バイアグラなどのPDE5阻害薬、漢方薬などの有効性が報告されています。
骨盤底筋トレーニング
性器・骨盤痛/挿入障害の方は精神的な要因もありますが、痛みの記憶から余計な力が入り、また骨盤底筋を上手く意識することができないため、収縮しがちで、弛緩ができない方もいます。
このような方には骨盤底筋トレーニングによる一定の改善が期待できます。
その他
潤滑剤も女性性機能障害において効果的と言われています。
性機能障害に対する当院の考え方
当院では性機能障害への対応としても「ご夫婦(カップル)」を一単位と考えて対応していくのが最も重要であると考えます。決して一人にしないことがポイントです。
性の姿は、万人が同じである必要は全くなく、カップル単位で十人十色なのが当然であると考えます。すなわち「正常」とされている概念から解放されることが重要と考えます。
そのうえで、ご夫婦の現状に即し、その中で最も適切な「性の姿(=愛の表現法)」はどういうものなのか?という答えを導いていくことを考えるわけです。
この過程では、性機能障害をお持ちの方ご自身以上に、実はパートナーさんの理解が非常に重要なものとなっていきます。
そんなお二人の現状理想の「性の姿」を導き出した後、では妊娠するためにはどうすればいいのか?腟内射精による妊娠を目指すのか、あるいは当院のような医療機関が手を加えて(人工授精など)妊娠を目指すのか、を決定していきます。
何らかの性機能障害を有する方ご自身は何となくその理由に気が付いているか、「何かがおかしい、でもどうすればいいのかがわからない」といった状態の方が多いと思います。
この性機能障害をお持ちの方の特徴として、この状態を内に秘め、何とか隠そうとします。
その結果性交渉を避けるようになり、典型的には、いわゆる「セックスレス」の状態になります。
これに対し、多くのパートナーは「性交渉に対し夫(あるいは妻)の何かがおかしい」ということには気が付いていますが具体的にはよくわからない、という場合が多くみられます。
どうしても「性」の内容であり、プライドもあり、本人は必死になって「隠そう」とするので、パートナーの行動が解決のきっかけとなることも多いのです。
性交渉に対し、ご主人様(あるいは奥様)の様子が何かおかしい、とお感じでしたらご相談下さい。
また、何らかの性機能障害にお悩みのご本人様は、内容が内容だけに相談するのに非常に勇気が要ると思います。が、実は性機能障害は決して稀な状態ではありません。かなり高頻度に見られる状態です。
男性であっても女性であっても当院に対しての遠慮は不要です。また当院からもオープンにお話しいたしますので、是非ともオープンに、お気軽にご相談ください。
また、女性スタッフとの相談をご希望なさる場合も遠慮なくお申し出ください。