人工授精(AIH)
人工授精(AIH)は、排卵のタイミングに合わせて精液を子宮内に注入し、妊娠の可能性を高める治療です。
受精は自然妊娠と同様に卵管内で起こります。

排卵日に合わせて洗浄・濃縮したパートナーの精液を、細いカテーテルで子宮内に直接注入します。
人工授精の対象
人工授精の対象となる方
・タイミング法を続けても妊娠に至らない方
・精子の数や運動率がやや低い方(軽度男性不妊)
・性交渉が難しい方(ED、セックスレス、出張など)
・子宮頸管粘液が少なく、精子が子宮内へ入りにくい方
・軽度の子宮内膜症や原因不明不妊の方
・体外受精はまだ希望していない方
人工授精の対象とならない方
・精子の数や運動率が著しく低い方(重度男性不妊)
・卵管閉塞や高度の卵管障害がある方
・女性の年齢が高く、早期の体外受精が望ましい方
・精液所見や検査結果に大きな問題がなく、人工授精による上乗せ効果が期待しにくい方
・人工授精を複数回行っても妊娠に至らない方
・排卵日の予測や調整が難しく、適切なタイミングで人工授精を実施できない方
人工授精の流れ
人工授精には、排卵誘発剤を使用しない「自然周期」と、使用する「排卵誘発周期」があります。月経周期やホルモン値、卵胞の発育状況に応じて治療方法やスケジュールを決定するため、通院日や移植日は患者様ごとに異なります。

妊娠率
人工授精の妊娠率は女性の年齢や不妊原因によって異なりますが、1回あたりおおよそ5~15%程度とされています。妊娠に至る方の多くは治療開始から数回以内に妊娠し、平均すると約3回で妊娠に至ると報告されています.

費用
| 1周期あたりの料金目安 | 料金(3割負担) |
| ①一般不妊治療管理料 | 750 円 |
| ②診察料、検査料、処方箋料 | 約5,200円〜約16,000円 |
| 1周期合計(①+②) | 約6,000円〜約17,000円 |
人工授精(AIH)と体外受精の違い
人工授精は体内での自然な受精をサポートする治療、体外受精は体の外で受精させてからに妊娠を目指す治療です。

よくある質問
A.費用は、通院回数や検査内容、お薬の使用状況によって異なります。保険診療で行う場合は、一般的に1周期あたり6,000~17,000円程度の自己負担となります。
A.人工授精後に長時間安静にする必要はないと考えられています。また、安静時間の長さによって妊娠率が大きく変わることはないとされています。
A.人工授精当日は、激しい運動やお腹に負担のかかる運動は控えてください。翌日以降は通常どおり生活していただいて問題ありません。施術後に液体が腟から流れ出ることがありますが、精子はすでに卵管へ向かっているため、妊娠への影響はほとんどないと考えられています。
A. 人工授精当日は、感染予防のため入浴は控え、シャワー浴のみとしてください。翌日からは通常どおり入浴できます。
A. 人工授精を受けた当日は、激しい運動は避けるようにしてください。
人工授精後は、子宮内に注入した精液が安定するまで時間がかかるため、当日に激しい運動を行うと、液体が腟から流れ出ることがあります。そのため、ランニングやジャンプを伴う運動、腹圧のかかるトレーニングなどは控えることをおすすめします。
翌日以降は通常どおり運動していただいて構いません。なお、翌日に少量の液体が流れ出ることがありますが、この時点では精子はすでに卵管へ移動しているため、治療への影響を心配する必要はほとんどありません。
A. お仕事は、人工授精を受けた当日から通常どおり行っていただいて問題ありません。
ただし、長時間立ち続ける業務や重い物を持つ作業、頻繁に走り回るような身体的負担の大きい仕事は、当日に限りできるだけ控えることをおすすめします。
お仕事の内容によっては、無理をせず休息を取ったり、負担の少ない業務へ調整したりすることをご検討ください。翌日以降は通常どおりお過ごしいただけます。
A.排卵しにくい場合には、排卵誘発剤を使用することがあります。また、黄体機能が十分でない場合には、黄体ホルモンを補充して子宮内膜を妊娠しやすい状態に整えることがあります。
さらに、排卵のタイミングを調整する目的で、人工授精日の前日または前々日にhCG注射を行うことがあります。
A.人工授精は1回あたりの妊娠率が限られているため、複数回継続することで妊娠の機会を増やしていく治療です。一般的には数回の実施が推奨されており、多くの場合は3~6回程度を目安に治療方針を見直します。
一方で、人工授精によって妊娠される方は比較的早い段階で結果が得られることが多く、数回の治療で妊娠に至るケースが少なくありません。そのため、年齢や不妊期間、不妊の原因などを考慮しながら、必要に応じて体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)への移行を検討します。
最適な治療回数や治療方針はご夫婦ごとに異なるため、医師と相談しながら進めていくことが大切です。
A.人工授精は、運動性の高い精子を子宮内に注入し、卵管内での自然な受精を目指す治療です。そのため、精子と卵子が出会い、受精卵が子宮まで運ばれる機能が必要となります。
一方、体外受精は、卵子と精子を体外で受精させ、培養した受精卵(胚)を子宮内に戻す治療です。受精から胚の発育までを体外で行うため、妊娠に至るまでの過程の一部を補うことができ、人工授精より高い妊娠率が期待できます。
A.タイミング法と人工授精の大きな違いは、どのような精子を用いるか、そして精子をどこまで届けられるかです。
タイミング法では、性交により射精された精液中の精子が、そのまま自力で子宮や卵管へ移動して受精を目指します。一方、人工授精では、採取した精液を洗浄・濃縮し、運動性の高い精子を選別して子宮内へ直接注入します。そのため、子宮頸管を通過する過程を省略できるだけでなく、より多くの運動性の高い精子を卵子の近くまで届けることが期待できます。
なお、受精はどちらも卵管内で行われ、受精卵が子宮へ運ばれて着床する流れは同じです。人工授精は、自然妊娠の過程の一部を補助する治療といえます。
